初恋が始まるとき。
 何も変わらない会話に、変わらない朝。ほっとする。

 こんなくだらない会話でも、あれば安心感があるなんて。
 それもたった金曜日の朝になかっただけ。

 そう思えばこの人にそれだけ絡まれたということでは?なんて考えに至り、やっぱり若干イラっとしてきた。

 呆れた表情で少し笑うこの人の顔を見ていると、毎朝何で愛想がいいわけでもない私に話しかけてくるのだろうと気になった。

 前まではどうでもいい、とすら思っていたのだけど、ここまで毎朝絡まれると気にもなってくる。


「…何で毎朝話しかけてくるんですか?」


 私の質問に渋谷さんは真顔でこちらを見る。


「何で?反応がおもしれぇから?」

「男性嫌いなの知ってて、面白いで近づいてくるの、人間として終わってません?」

「でも、そういうもんじゃない?何でこの子男嫌いになっちゃったのかなとか、単純な興味と…。後、女の子に冷たくされたことないから、逆に燃えるというか」

「知ったこっちゃないんですよ、そんなの。散れ」

「全然先輩に吐く言葉じゃねぇからな、それ」


 わかってはいるけど、人が嫌なものに対して嬉しそうに寄ってくる人間は一度煮てもらうか、焼かれるべきだと思う。


「後、単純に顔がタイプ」

「私、兄に似てるってよく言われるんですけど、兄の事もいけるってことですか?」


 あえて気持ち悪がられる言葉のチョイスをしたのだけど、渋谷さんは真剣に考えてから「女ならいけるかも…」と言い出して、本気でゾッとした。

 このことをうちの兄に連絡したら≪お前もそんな言葉、真に受けんなよ…≫と結構、本気で嫌そうな反応が返ってきていた。
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