初恋が始まるとき。
 そう考えている時、渋谷さんと目が合った。
 いつもなら目が合うと笑顔で手を振るなりするけれど、こういう時渋谷さんが徹底している事がある。

 別の女性と遊んでいる時は、その人しか見ないと決めているのか、女性と居る時はコンタクトを取って来ない。

 それでいいし、ずっとそうであればいいと思っているのだが、その徹底ぶりも私からしたら何だか気持ち悪い。

 当然私もその事に関して彼に何か言ったりしないし、何も思わない。

 目の前に居る女性を本当に好きみたいな顔をして、数時間後には別の女性と楽しそうにしている渋谷さん。本当によくわからない。

 普通に通り過ぎて自動販売機に向かい、飲み物を購入しに行く。
 いつも通り緑茶を選んで、そのままオフィスに戻る時だった。

 後ろから足音が聞こえてきて振り返ると、そこには渋谷さんがいた。


「よっ」

「お疲れ様です」


 いつも通りそう声を掛けると「見てたよな。さっき」と言いながら隣に並んで自動販売機を見ていた。


「見てましたけど」

「顰め面だったから、何か思ってる事でもあんのかと思った」

「思ってる事、とかは特にないんですけど、ただ単純に不思議なんですよ。何で1人に絞らないで、何人とも遊ぶのか」

「そう言うの気になっても普通本人に聞かないもんじゃねぇの?」

「言ったじゃないですか。渋谷さんに気を遣うリソースはさけないって」


 私の言葉に笑ってブラックコーヒーのボタンを押して、商品が落ちてくると、取り出し口から取り出す。
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