初恋が始まるとき。
「てか、何で1人に絞る必要があるか、って思うんだよな」

「というと?」

「俺は別に性欲を満たして楽しく遊びたいだけで、愛とか恋とか望んでない。それに、女の子だって俺にそんなの期待してないと思う」

「期待してないって…」

「俺みたいな男に本気になっても幸せになれないってわかってるから、俺を都合の良い相手として向こうも使ってるだけ。彼氏がいない間、寂しさの埋め合わせとか、浮気とかちょっと悪いことしたい時の相手とか…、誰も恋人になってほしいとか、好きとか思ってないと思うよ」


 別に悲しむでも寂しそうでもなく、口元に弧を描いてただ淡々と話している。

 あんなにたくさんの女性に声をかけられているのに、全員がそうだと言うのだろうか。渋谷さんの言う通り一定数はそういう女性もいるかもしれないが、好きだとか、可愛いとか言われる内に好きになってしまうこともあると思う。

 私には経験がないから、そういうもの、としか見れないけれど。


「渋谷さんを好きだって女の子が出たら?渋谷さんが気のある言葉ばかり吐いていたら、脈があるかもって勘違いして恋だと思う子もいるんじゃないですか?」

「…うーん、それは俺、その子の勘違いなんじゃねぇかなって思うんだよな。都合の良い言葉をくれる心地いい相手を好きだと錯覚してる」


 そう言いながら缶コーヒーを飲んでいて、淡々と話している。

 話を聞いてみて、意外とこの人は冷たい人なのだと知った。好きになってしまった女性がもしいたとしても寄り添いなんかしないのだと。
< 17 / 132 >

この作品をシェア

pagetop