初恋が始まるとき。
 今までここまで渋谷さんに踏み込み過ぎた事なんて無かったのに、初めてあんな風に牽制された。

 今までは私が嫌がるぐらいだったのに、そもそも女性を雑に扱う男が嫌いで、何でそんな風に扱うのか気になっていただけだったのだけど、私もあの人の考え方に少し否定したい気持ちがあったのだと思う。

 いつの間にか少し歪んだ考え方をしていて、自分が馬鹿だと思った。

 渋谷さんの考えなんてどうでもいいじゃないか。正直、さっきの自動販売機に水のペットボトルは何本入ってるかとか、それと同じくらいどうでもいい。知らなきゃ知らないで困らないからだ。

 それなのに自分と考え方が合わないからとむきになって返してしまった。別に目くじらを立てることでもないのに、立てて。

 溜息を吐いてオフィスのデスクに戻ると、画面が暗くなっていたPCのキーボードに軽く触れ、画面を点けた。

 どうでもいい、と言いながらも椅子に座りながら先ほどのことを思い出してしまう。


『俺の恋愛観とか、そういうの全部話していいけど、代わりに何聞かせてくれる?どういう男がタイプか、とか、俺みたいな男をどう思うかとか?

ああ、それとも、男嫌いになった理由、とか?興味あるんだよね。俺なら治せるかもしれないし』


 先ほどの一連の言葉を思い出して舌打ちした。

 渋谷さんの様な人の気持ちもわからなさそうな男が一番嫌いなのに、そんな男に治されてたまるか。
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