初恋が始まるとき。
「嫌いって思うって事は、ある意味俺を意識して仕方がないって事なんじゃない?興味さえ持ってもらえてたら、案外惚れさせるのも簡単かも」

「残念ですけど、渋谷さん以外の男性も苦手ですし嫌いなので、特別でも何でもないですね。それでは、まだ仕事残っているので、お疲れ様でした」


 それだけ言い放ち、業務的に微笑んでやるも、渋谷さんはその場から退こうとはしないが、気にもせず残りの業務を進めることにした。

 何が、俺を意識して仕方がないって事なんじゃない?案外惚れさせるのも簡単かも。だ。自惚れも大概にしていただきたい。

 興味がうんたらの前に、嫌いな物を好きになるということがどれほどむずかしいのか知らないのだろうか。もし嫌いなものに嫌悪感が消えたとしたら、それは好意ではなく慣れだ。

 そう思いながら仕事をしていると、隣のチェアを引いて座る渋谷さん。


「でも特別俺の事嫌いじゃん。他の人よりもずっと。他が笑顔で流せても、俺だけは許せない事、あるんじゃん?」

「ありますよ。しつこいってよく言われませんか?」

「営業なんで粘るのが性分というか」

「恋愛においては大きなマイナス要素ですね」

「人を好きになった事無いくせにわかったような口利いてんな」


 その間もその会話に夢中になるのは無駄なので、手を動かしながら片手間に聞く。

 というか、今すぐお帰り頂きたい。
 何しにここに留まっているのか。
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