初恋が始まるとき。
 頬をつまんできている手を強めに払い、軽く咳払いをして話し始める。


「よくある話と言えばよくある話だと思います。私、小学生の時、まわりより少しだけ身体の発達が早かったんです」

「身体の発達って…」

「身長とかもですけど、まあ女性の出る所が出るのが早かったってことです」

「それで?」

「後は、まあそれを見て揶揄う男子とか、生理ナプキンを見て騒ぐ男子とかを見て、気持ち悪いってなったそれだけの話です」

「…引きずり過ぎじゃね?」

「そう言われたらそうかもしれないですけど、それから女の園で育った私からしたら女子だけの心地良さも知ってしまったわけですよ」


 時々面倒な事も当然あったけど、女性だけの環境は私にとっては居心地が良かった。同じ痛みを共感できる所も、恋だなんだのと嫉妬に巻き込まれる心配がない事も、いろいろと私には合っていたのだ。

 社会に入ってから当然男性を避けられないことはわかっていて、大人になればなる程周りに無関心になっていく人が増えて、だからまだ男性がいる環境にも耐えられていたはず。

 それなのに私がどれだけ業務的に接しても、冷たく接しても私に近寄る事をやめなかった人間が、この渋谷さんという人間だ。

 どうしてかわいげもない、何も持っていない私にそこまで執着するのかは、いまだにわからない。
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