初恋が始まるとき。
「は~、本当むかつく」

「何が?ときめいちゃった?」


 緩んだ顔でそんなことを問いかけてくる渋谷さんに軽く舌打ちする。

 否定もできないが、肯定もしたくないのが複雑なところで、つまり何も言いたくない。

 渋谷さんから顔を逸らしていると、目の前で楽しそうに笑っているのが見える。

 まだ20分ほどしか一緒にいないのに振り回されている気がする。


「ちゃんとときめくとかそういう感情はあるんだな」

「どういう意味ですか。人間なんで感情くらいありますよ。ていうか肯定してないので決めつけやめてください」

「てかそろそろ教えてくれてもよくね?男嫌いの理由」


 確かに別に隠すことの程でもない。

 この人と話すのが面倒で、わざわざ事情を言いたくもなくて、だから話すことを拒んでいたけれど、こうして出かけるタイミングがあったなら別に話してもいいと思った。


「すっごいくだらないことですよ」

「くだらないとかあんの?男嫌いって相当じゃね?」

「…うわ~、からかってきそう。やっぱり話したくないかも」

「そんなことしねぇよ、ガキじゃあるまいし」

「ガキでしょ」

「俺がガキなら色気の強いガキすぎてまわりが失神するわ」


 その発言に鼻で笑うと渋谷さんに頬を思い切りつままれた。


「どうせなら可愛らしく笑えよ」

「ひょーもない(しょーもない)こというからですよ」


 そもそも私にまわりの女性みたいな可愛らしく笑うを求める方が悪い。
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