初恋が始まるとき。
 さすがに恋人っぽい行動に躊躇する。

 これはいわゆるバカップルがやるあーんってやつではないのか。

 そう思い固まっていると渋谷さんは強引にスプーンを突っ込んできた。


「んぐっ」

「何間接キスごときで固まってんだよ。キスした仲じゃん」

「うっかりスプーン投げつけても文句言わないでくださいね」

「で、んまい?」


 そう言って笑顔を向けてくる渋谷さんに言ってやりたいことはたくさんあるのに何も言えなくなった。

 ハヤシライスは文句なしに美味しいし、もらっておいて文句を言うこともできない。


「…おいしいです」

「さっきみたいな言い方しろよ。可愛いから」

「ホワイトソースオムライスには勝てません」

「そう」


 私の返しに楽しそうに笑う渋谷さん。
 今日会ってからずっと楽しそうに見える。

 会社で女性と関わっている時も笑顔だけど楽しそうには見えなかった。それなのに私といる時は少し楽しそうと思うのは自惚れすぎ?


「で、この後はどこに行くんです?いい加減教えてくださいよ」

「我慢できない子だな。着いた時のお楽しみだよ」

「信用ならない人に連れていかれるの怖いですから」

「いやいや、デート来といて今更そんなこと言うなよ」


 今日は正論ばっかり言いやがって。
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