初恋が始まるとき。
 その調子でデート場所など教えてももらえず車に乗り込み、連れられるがまま来たのは、食べ歩きで有名な繁華街だった。

 娯楽施設や商業施設もあるが、圧倒的飲食店が多く隣を歩く男を睨みつけた。


「さっきがっつり昼食べたんですけど」

「デザートは別腹~」

「太るっての!」


 人が怒っているのも気にせず笑っている。

 こんなことなら昼控えめにしたのにと怒りながらも渋谷さんの隣をおとなしく歩いていた。


「腹減るまで遊べばいいじゃん。ボウリングとか好き?」


 そう話しながら人の腰を少し強めに抱き寄せる。


「ちょっと!」

「いいから。人と当たるって」


 そう言われ周りを見ると確かに人が多くぶつかりそうになっていた。

 自分の不注意さで渋谷さんのこの行動を引き起こしたため、それ以上は何も言えなくなった。

 そんな私を見て少し笑い、歩幅を合わせながら歩いてくれる。


「手とか腕とかあったでしょう。何で腰?」

「抱きやすい所にあった」

「くそきも」

「女の子がそんな言葉づかいしません」


 普段男性に腰に触れられることも、こんなに距離が近づくこともないから身が固まる。

 それと同時にあの合コンの後、後ろから抱きしめられていたことを思い出し、顔が熱くなった。
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