初恋が始まるとき。
『渋谷の態度も気になるけど、優菜はどう思ってるの?渋谷のこと』


 結愛さんにそう問われ、自分でもわからないから答えに悩んだ。
 
 そもそも私は男性嫌いというより、あの当時からかってくるガキな男子が苦手で、大人になってからは小学生の時の様なことはなかったし、トラウマの様に染みついてから苦手意識もそのまま残っただけだったのだと思う。

 だけど最近まで本気で恋愛なんてしなくていいって思っていたし、今も恋愛をしたいのかと問われたらわからない。それよりも怖い。

 関係性が変わると言うことは、何かが進むと同時に終わってしまうこともあるんじゃないかとか。

 知らないことに踏み出す瞬間はいつだって怖い。

 無言で何も返事を出来ない私に何かを察したのか結愛さんは『あのさ』と返事を待たずに言葉を放つ。


『優菜の気持ちを私は間違いなく多少理解出来ると思う』

「え?」

『似てるから。私の当時の状況と、優菜の今の状況が』


 似てると言われてもパッと来なかった。
 結愛さんにこんな風にわからないと悩むことがあるなんて。

 どう返事をするべきか悩む私の沈黙に結愛さんが少し笑う。


『私も恋愛なんてしなくていいって思ってたし、自分がまさかこんなに早く結婚することになるなんて思ってなかった。それに加えその旦那が元女遊びするクズ』

「ああ、言ってましたよね」

『そう。私もあれ、これってもしかして…、って思った時は怖かった。この人にまだ遊ばれてるかもって。だけど、突き放し続けても何回もくる星凪になら騙されてもいいかもなって思った』

「そ、んなこと、思えなくないです?騙されてもいいって、もしそのまま捨てられたら…」

『ああ、その時は多分殴り倒すじゃ済まないかも』


 やっぱりめちゃくちゃキレるんじゃん…。

 その結愛さんを想像するだけで鳥肌が立つレベルでゾッとした。


『私が上手くいったから渋谷もそう、とは当然言わないけどね。渋谷も聞いた感じ待ってくれそうなら、もう少し悩んでみてもいいじゃない?』

『返事、焦って決めてもいいことないもんね』


 結愛さんの言葉に同意する様に紬さんもそう言っていた。

 私は今後先、渋谷さんとどうなりたいのだろう。
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