初恋が始まるとき。
 翌日、どれほど悩んでいても月曜日は当たり前の様にやってくるし、仕事だって私の都合で休みになる訳がない。

 気が重くなりながらも出勤すると、今日に限って会社のエントランスで悩みの元に遭遇する。


「ゲッ」

「何でそんな反応すんの。デートした仲じゃーん」

「余計な事言わないでください!」


 渋谷さんとデートしたなんて他の社員に聞かれたら噂になりそうで嫌だ。

 男性社員には好奇の目を浴びせられ、一部の女性社員の噂の的になり、また一部の女性社員に妬まれる事だろう。

 そんなの会社で起きるなんて、何があってもごめんだ。

 渋谷さんに慌ててそう言うと、若干呆れた表情をしながら一緒にエレベーターホールへと向かう。


「あ、そうだ。今週金曜日何かある?」

「金曜日?残業さえなければなんも無いと思いますけど、何でですか?」

「飯行かない?」

「は?」


 最近ますますこの人との関わりが増えている気がする。

 前までは冗談っぽく誘ってきていたくせに、今日のは冗談には聞こえない。

 渋谷さんの方を見ると、いつもみたいな揶揄う表情も無く、むしろ真顔で返事をしない私を見て首を傾げている。

 どうしてあの1日でこんなに変わるんだ、この人。
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