初恋が始まるとき。
 少しアルコールを摂取してから話は踏み込んだものへと進んでいく。


「そういや、渋谷さんって最後に彼女いたのいつですか」

「いつ…、んー、高校とか?」

「へー、そっからずっと遊んでた感じですか?」

「まあ、そうかも」


 いつもみたいに自分からは話さず聞かれたことについて話している。いつもならこの時点で話したくないのかも、と察して引くところなのだけど、今日は踏み込んでみたいと思った。


「何でですか?それが一人に絞るの馬鹿らしくなっちゃった理由?」

「んー、てか高校の時、好きになった女の子が当時いたんだけど、その子に瑛都は気軽な友達として絡むくらいがちょうどいいって言われた」

「うわ…、遠回しに振られたも同然ですね」

「そう。まあ俺、割とずっとこんな感じだったし、軽いノリな感じが本気にされなかったし、自分でもこんなんが恋人だったら嫌だなとは思うな」


 案外、ありがちな話なのかもしれないけれど、渋谷さんの話を聞いて意外だと思った。

 だって周りの女性社員はこの人と交際したいと思う人が多いのに、遊びでいいなんてそんな風に感じなかったから。

 どうして渋谷さんはそう感じたのか理解が出来なかった。


「…モテ、ますよね?」

「まあ一応」

「謙遜しろや」

「こわ」


 自信たっぷりな渋谷さんに軽く舌打ちすると、渋谷さんは頬杖をついて少し笑っている。
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