初恋が始まるとき。
「渋谷さんって私のことどう思ってるんですか?」

「何急に」

「急じゃないですよ。私が恋をする時は渋谷さんだったらとか思わせぶりなこと言いながら、はっきり好きとは言ってくれないじゃないですか。まだ遊びの対象なのか、それとも恋愛対象なのかわからないんです」


 自分なりの言葉で思っていることを聞いてみたのだけど、言葉にした途端、平気を偽りながらもすごく緊張していた。

 もし遊びだと言われたら私はどう思うのだろうか?

 本気で相手にしなくていいとむしろすっきりする?
 それとも、遊びでここまで近づいてきていることを怒る?
 もしくは、ショックなんて受けたりするのだろうか。

 自分でも想像のつかない自身の気持ちに好奇心と恐怖があった。

 渋谷さんは私の問いかけの後、こちらをじっと見ている。

 それからふっと柔らかく笑うと、両腕を組むとそのままテーブルについて、こちらを覗き込みながら軽く首をかしげる。


「本気だよって言ってほしい?」

「な…っ…」


 そう言われれば私が期待をしているみたいで、急激に羞恥心に襲われた。顔が熱くなって急いで顔を逸らすと、渋谷さんは笑っている。

 この男は私をからかってきている。

 質問に対して質問で返したりして、なんてずるい男なのだろうか。

 私のペースに持ち込んでいると思っていたのに、気付いたら渋谷さんのペースに持ち込まれていた。それが悔しい。
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