初恋が始まるとき。
「寝る?それとも映画でも見る?」

「…私、ソファ貸してもらえたらいいです」

「客をこんな所で寝かせるか。一緒に寝たらよくね?手は出さないって」

「渋谷さんの手を出さない程信用できない物はない…!」

「こんな所まで着いてきて何言ってんだ」


 またド正論を返され、何も言い返せなくなっていると、ふっと微笑み優しく髪を撫でてくる。

 いつからこんなに優しい笑みを零す様になっていたのか、そう思いながら彼の目を見つめる。

 こんな風に、本当にもしかしたら私の事好きなんじゃない?って錯覚してしまいそうな表情の柔らかさや、触れる時の壊れ物を扱う様な優しさ。前はもっと強引さだけが目立つような触れ方だった気がするのに、最近は独占欲を感じる強引さに、繊細な物を触れる様な優しさを感じるようになった。

 そしてそんな変化は渋谷さんだけじゃない。彼の変化をこんなにも見つけられるようになった自分。前はこんな風にこの人の変化になんて気付かなかったと思う。本当の渋谷さんを見ようともしていなかったのだから。

 お互いに少しずつ変わってきていて、そんな変化から目が離せなくなっている。


「…寝ますか」

「一緒に寝る?」

「手出したらセクハラで訴えます」

「こわ」


 そう言って笑いながら私の手を引いて寝室の方に導く。
< 88 / 132 >

この作品をシェア

pagetop