初恋が始まるとき。
「あ、の、これからもよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いします」


 そう挨拶をして本田さんの背を見送る。

 女性らしくて、笑顔が可愛らしく素直で愛嬌がある。
 私とは真反対といってもいいほどの女性。

 どうして渋谷さんは彼女に精算処理をお願いしたのだろうか。
 渋谷さんと接点があるということは営業部なのだと思うけれど。

 私にもやもやする権利なんて無いのに、どこか胸が突っかかってすっきりしない。

 それでも、ほんの少しだけ渋谷さんとはお互い特別かもと思いあっていたのは奢りなのだろうか。





☁️𓂃 𓈒𓏸





 昼休みに社員食堂で昼を済ませようと思っていた時だった。こういう会いたくないタイミングで人間とは引き合わせられるもので、ほんの少し先に渋谷さんがいる。

 その隣には先程見た本田さんがいて、ふたりで楽しそうに会話をしている。本田さんの頬はやはり赤く染まっていて、恋する女の子というのが全面に出ていた。


(お似合い、なのがまた…)


 そう思いながらも私にはあの間に入る勇気も資格もない。

 ぼーっとただ2人を眺めていると、こういうタイミングでいつも渋谷さんは私を見つける。いつもなら、他の女性と居る時に絶対にこちらへは来ない。

 目の前の女性を見る遊び人の彼なりの誠意からか、昨年のある時だってそうだった。
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