初恋が始まるとき。
 いやいや、別に寂しいとか無いですからなんて、誰に言い訳をしているのかも分からないことを考えながら、精算処理を終わらせる。


「終わりました。この封筒を渋谷さんにお返しください」

「あの、佐々木さんにって指名されたのですが、専属とかあるのでしょうか?」

「ああ、いや、あの人の1つ下なので頼みやすいのだと思います。経理課は長く勤務されている方が多く、年上の方が多いですし、本田さん的にも私が頼みやすいと思ってたんじゃないですかね?」


 知らんけど。とは思いつつ、そう説明すると「そうなんですね」なんて、少し安堵していた表情を見せていて、そこで違和感を感じた。

 どうして今の説明で安堵したのか、と思ったけれど理由はすぐにわかったきがした。

 渋谷さんに惹かれ始めているのだと思う。だから、特別でも何でもないと知って安堵したのだ。それが一番説明が着くから、その考えに至ったのだけど、私はそれ以上何も言わず本田さんを見ていた。

 当然面白くはない。今の説明だけで安堵されたら、本当に渋谷さんにとって私って何でもない存在なのではないかと、そんな気がしてくるから。

 だけどその考えを否定できるほど何も無いのも事実で、渋谷さんとの空いている時間が更に私達の関係性を不明確にさせている。
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