女神イリオネスのバイオリン
情景の女神
 大海原のまんなか。
 山のように大きな男が、海から胸まで突き出して立っていました。

 海の神『ポセイデン』

 彼が差し出した、大きな手のひらの上には、ひとりの少女が乗っていました。
 メガネをかけ、濃紺の服をまとい、背中にはバイオリン。

「では、ヘローラ様からの伝言は確かにお伝えしました」

「うむ、しかと預かった。ソナタは、このまま天界へ帰るのか?」

「はい。報告を終えるまでが私の役目ですから」

 ポセイデンは、その言葉を聞き、少し表情を落としました。

「うむ。でも仕事に真面目なのはわかるが、多少はゆとりを持つのも重要だと思うが。どうだい? 人間界を見つめ、少し寄り道してみては」

 少女は『何故?』と表情を見せます。

「其方は女神。真面目だけではなく、多少なりとも、世界に幸せを見せるのも役目だと思うが」

 ポセイデンは最後に微笑みを見せると、イリオネスは恥ずかしさを受け取るように微笑み返事します。

「はい」
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