地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
そう言って、カウンターに入る。いつも通りの動作。

それなのに、心臓の音だけが落ち着かない。

コーヒーマシーンの前に立ち、ボタンに手をかける。

ほんの一瞬、躊躇してから。カチ、と押した。

機械が静かに動き出す音が、店内に響く。

その音に紛れて。

背後に立つ気配が、ゆっくりと近づいてきた気がした。

振り返ると、そこにいたのは悠生さんだった。

「パン、どれにしますか?」

棚に手を伸ばそうとした、そのとき。

背後から、そっと腕が回される。

「……っ」

ふわりと、彼の香りに包まれる。

昨日と同じはずなのに、朝の光の中だと、どこか現実味があって――余計に胸が高鳴る。

「あの……」

言葉を探す私の耳元で、低い声が落ちる。

「……俺たち、昨夜……愛し合ってしまいましたね」

その言い方に、思わず息が止まる。
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