地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
初めて見たときから、どこか他のお客さんとは違う空気をまとっている人だった。

威圧感があるわけではない。

けれど、軽く扱ってはいけない――そんな感覚。

豆を挽き、ドリップの準備をする。

ふと視線を感じて顔を上げると、彼がこちらを見ていた。

「……いつも、同じですね」

思わず口にしてしまってから、少しだけ後悔する。

馴れ馴れしかっただろうか。

けれど彼は、気にした様子もなく小さく頷いた。

「ええ。ここが、一番落ち着くので」

「そうなんですね」

ほっとして、コーヒーにお湯を注ぐ。

ゆっくりと、丁寧に。

その様子を、彼は静かに見ていた。

やがてカップを差し出すと、彼はそれを受け取り、一口だけ飲む。

「……やはり、いいですね」

ぽつりと呟かれた言葉に、胸の奥がわずかに温かくなる。
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