地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
「ありがとうございます」

それ以上は何も言わず、彼は席に着く。

窓際の、いつも同じ席。

そこから店内を眺めるようにして、スマートフォンを取り出した。

しばらくして、電話が鳴る。

「はい、御門です」

やはり、というべきか。

その口調は、先ほどまでとは少し違っていた。

「……落ち着いて。状況を整理しよう」

低く、けれど穏やかな声。

相手を責めることなく、淡々と指示を出している。

「責任の所在は後で構わんよ。まずは被害を最小限に」

その言葉に、思わず手を止めた。

普通なら、怒鳴ってもおかしくない場面のはずなのに。

それでも彼は、終始落ち着いている。

電話を切ったあとも、表情は変わらない。

まるで、何事もなかったかのように。

――やっぱり、この人はすごい人なんだ。
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