地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
短いやり取り。

それなのに、不思議と沈黙が苦にならない。

むしろ、この空気が心地いい。

「……来るかどうか、迷いませんでしたか」

ふと、彼が尋ねる。

「え?」

「こうして待つのは、迷惑かもしれないと」

少しだけ視線を逸らして言うその姿に、意外さを感じる。

「そんなこと、ないです」

すぐに答えていた。

「……嬉しかったです」

言ってから、少しだけ恥ずかしくなる。

でも、嘘じゃない。

彼は一瞬だけ足を止めて、こちらを見た。

その視線が、まっすぐで。

「それなら、よかった」

静かに、そう言った。

その一言に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

気づけば、さっきまで感じていた疲れは、どこかへ消えていた。

ただ。隣を歩くこの人と、同じ時間を過ごしている。

それだけで、十分だった。
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