地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
「……はい」

小さく、でもはっきりと頷く。

「よろしく、お願いします」

そう言うと、悠生さんの表情がほんのわずかに緩んだ。

大きく笑うわけでもないのに。

それだけで、十分に伝わる。

「ありがとうございます」

静かな声で、そう返される。

その一言が、胸の奥に深く残る。

気づけば、テーブルの上で指先がそっと触れられていた。

強く握るわけでもなく、ただ確かめるように。

その温もりが、ゆっくりと広がっていく。

――もう、戻れない。

でも、不思議と怖くなかった。

むしろ。この先に続く時間を、少しだけ楽しみにしている自分がいた。
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