地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
気づけば、手の動きが止まっていた。

あのときと同じだ。

相手は違うのに、状況は似ている。

相手は、社長。

私とは、住む世界が違う人。

最初は優しくて、距離が近くて。

でも、どこかで線を引かれる。

「……また、同じことをするの?」

心の中で、自分に問いかける。

答えは、わかっている。

あのとき、あんな思いをしたのに。

どうして、また期待しようとしているのか。

「……だめ」

小さく首を振る。

これ以上近づいたら、きっとまた――私は、同じように傷つく。

閉店間際、扉のベルが鳴る。

その音だけで、誰が来たのかわかってしまう自分がいた。

「いらっしゃいませ」

顔を上げると、やはり悠生さんだった。

いつもと同じ、落ち着いた佇まい。
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