地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
「……私、以前……御曹司の方とお付き合いしていたことがあるんです」

言葉にすると、あのときの空気が蘇る。

「結婚の話が出たときに……ご両親に呼び出されて」

声が、少しだけ震える。

それでも、止めない。

「息子は諦めてほしいって……お金を渡されました」

店内が、しんと静まり返る。

「結局、お金は受け取らなかったですけど……それっきりでした」

悠生さんは、何も言わない。

ただ、静かに聞いている。

その沈黙が、逆に背中を押す。

「……一緒なんです」

小さく呟く。

「悠生さんも……同じ、ですよね」

社長で。あの人たちに囲まれていて。

私とは、違う世界にいる人。

「だから……」

言葉を続けるのが、こんなにも苦しいなんて。

「また、同じことになる気がして」
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