地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
視線を落とす。

彼の顔を見ることができない。

「……もう、傷つきたくないんです」

正直な気持ち。

情けないくらい弱い言葉。

それでも、これが本音だった。

「なので……」

一度だけ、ぎゅっと指先に力を入れる。

「今回の話は、なかったことにしてください」

言い切った瞬間、胸が締めつけられる。

苦しくて、でも。

これでいいと、自分に言い聞かせるしかなかった。

しばらくの沈黙のあと、悠生さんはゆっくりと口を開いた。

「……俺の両親は、俺が決めた結婚相手に口出しするような人ではありません」

その言葉に、思わず顔を上げる。

静かな声なのに、はっきりとした意志があった。

「え……」

予想していた答えとは違って、言葉が続かない。
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