地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています

4章 元カレの存在

その日の夕方、扉のベルが鳴った瞬間。

なぜか、胸がざわついた。

「いらっしゃいませ」

いつも通りに顔を上げて――息が止まる。

カウンターの席に座ったその人を見て、体が固まった。

「……高貴」

思わず、名前がこぼれる。

忘れたはずなのに。

忘れようとしていたのに。

目の前にいるのは、間違いなく――かつて付き合っていた人だった。

整った顔立ちも、落ち着いた物腰も、何も変わっていない。

ただ、その目だけが。どこか冷たく見えた。

「どうして、この店を……」

声が震えるのを抑えながら、問いかける。

彼は、ゆっくりと視線を上げた。

「調べたんだ」

あっさりとした答え。

「咲のことなら、何でも知ってる」

その言い方に、背筋がぞくりとする。

「住んでる場所も」
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