地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
穏やかにそう言って、店を出ていった。

――それから。

悠生さんは、また閉店間際に来るようになった。

以前と変わらない距離で。

それ以上でも、それ以下でもなく。

「御門さん、あの……」

「客として来るだけなら、構わないでしょう」

そう言ってただ、静かにコーヒーを飲みに来る。

何も押しつけることもなく。

何も急かすこともなく。

「今日は卵のサンドイッチ、ありますか?」

「は、はい。」

「頂いても」

「……ええ。遠慮なさらず」

そして私は、サンドイッチをお皿に盛りつけて、彼の前に差し出した。

彼の存在だけが、少しずつ。

私の中に残っていくのを、止められなかった。
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