地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
距離を詰めてくるような圧。

その空気に、思わず体がこわばる。

「高貴、もうやめて」

小さく制止する。けれど彼は、まったく意に介さない。

「心配してるだけだろ」

そう言いながら、ゆっくりと立ち上がる。

「変な男に引っかかってないかってさ」

その言葉が、店内に落ちる。

静まり返る空間。

その中で悠生さんが、初めて口を開いた。

「……初めまして」

落ち着いた声。

「御門と申します」

一切の感情を見せない、丁寧な口調。

それが、かえって場の温度を変える。

高貴は、一瞬だけ眉を動かした。

「へえ……御門?」

その名前を聞いて、わずかに表情が変わる。

けれどすぐに、元の軽い笑みに戻る。

「ずいぶん丁寧だな」

からかうような言い方。

それでも、悠生さんは動じない。
< 51 / 90 >

この作品をシェア

pagetop