地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
ただ静かに、まっすぐ視線を返している。

「こいつ、地味でしょ。つまらなくないですか?」

高貴は、くくっと喉の奥で笑った。

その言い方は軽いのに、はっきりと棘がある。

胸の奥が、きゅっと縮まる。

「……いえ」

静かな声が、すぐに重なった。

「俺は、咲さんと一緒にいて楽しいですよ」

一切迷いのない、穏やかな言い方。

それだけで、空気が少し変わる。

「咲さん?」

高貴が眉を上げる。

「そういう仲?」

探るような視線が、こちらと悠生さんを行き来する。

私は、何も言えない。

言葉を挟めば、余計に状況が悪くなる気がして。

「へえ……」

高貴は面白がるように笑った。

「知ってました?」

その一言で、嫌な予感が走る。

「俺と咲、前に付き合ってたんだよ」
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