地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
店内には、もう私たち二人だけ。

「……送ります」

カップを置きながら、悠生さんが言う。

「え……でも」

「もう、遠慮は不要です」

やわらかく、でもはっきりとした声。

「あなたと過ごす時間は、私にとっても大切なので」

その言葉に、胸がじんとする。

「……ありがとうございます」

素直にそう言うと、彼は小さく頷いた。

店を閉めて、外に出る。

夜の空気は少し冷たいけれど、隣に人がいるだけで違って感じる。

並んで歩く。

自然と、距離が近い。

「……今日は、少し疲れていませんか」

不意に、そう言われる。

「え?」

「歩き方が、少しだけゆっくりなので」

そんなことまで気づくんだ、と思う。

「……大丈夫です」

そう答えると、彼は一瞬だけ足を止めた。

「無理はしないでください」
< 80 / 90 >

この作品をシェア

pagetop