地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
その言葉と同時に、そっと手が触れる。

強く握るわけではなく、ただ軽く添えられるだけ。

それでも。

その温もりが、じんわりと伝わってくる。

「……こうしていると」

ぽつりと、悠生さんが言う。

「日常が、少し変わりますね」

その言葉に、思わず頷く。

「はい……」

ただの帰り道。

ただの会話。

でも、確かに変わっている。

一人で歩いていたはずの時間が。

誰かと並んで歩く時間に、変わっている。

「……咲さん」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

「これからも、こうして過ごしてもいいですか」

静かな問いかけ。

でも、その奥には確かな願いがある。

「……はい」

迷うことなく、頷いていた。

その瞬間、彼の表情がほんのわずかに柔らぐ。

それを見て、胸の奥が温かくなる。
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