無自覚系お姫様は溺れるほどに愛され中
無自覚お嬢様、愛されすぎる side 羽奈
リオ君、なんで!?
放課後の生徒会会議がやっと終わった。よし、誰よりも早く部屋を出よう!
そう意気込んでいたのに、生徒会長の碧葉君に呼び止められてしまった。
「紺野、数字が間違ってる」
「すっ、すみません!」
さっき提出したばかりの文化祭資料を奪うように受け取り頭を下げた。
再確認ができていなかったみたい。
長身の彼に見下ろされるなんていつものことなのに、つい後ずさってしまった。
「もしかして疲れてる?」
「いえ、そんなことは……」
歴史ある名門校、星菏宮高校の生徒会長、碧葉柊佳君は、いわゆる学園の王子様。
でも良いのは見た目だけじゃない。成績、運動神経、学園をまとめる才覚まで持っているのに、家柄まで良いという完璧な人なの。
そんな人が『お互いのお父さん同士が親友で約束を交わした』というだけで私の婚約者だなんていまだに信じられないし、自信家の碧葉君と目が合うと何もかも見透かされているような気持ちになる。
「ほんとに無理してない?」
「お気になさらないでください。資料は直して明日必ず提出しますので……今日はこれで失礼いたします!」
「紺野ちょっと待って、話が……」
はぁ。また逃げちゃった。
まともに話もできない気弱な自分が由緒ある碧葉家の一員なんかになれるんだろうか。
親同士が決めた結婚だけど、彼に見合う女の子になることはかなりのプレッシャーだった。
帰宅しても特に楽しいことはなく、いつもお稽古の嵐。
花嫁修業も兼ねているんだけれど、ただ急かされるままに日々やるべきことをこなすだけ。
自分なりに努力はしてきたけれど、達成感なんか感じたことがない。
今日は3つをすませて夕食の席に着いた。ここまでくれば自分のお部屋に戻るまでもう少し。
あの子が待ってくれていると思うと食べるスピードは自然と早くなる。
でも部屋に戻ったときはもう窓から月の光が差していた。
お気に入りの白い家具や天蓋つきのベッドやドレッサー。
あとは家族写真がたくさん飾られた壁には繊細な装飾が施された額縁があって、まずは目線の高さにある写真の中のお母さんとおばあちゃんに真っ先に挨拶をする。
「羽奈は今日も1日頑張ってきました」
大好きな人たちの微笑みで1日の緊張がとけて、とたんに体はふらふら。
どうにかソファへとたどり着くと、足をまっすぐに投げ出してちょこんと座っているくまのぬいぐるみの前で力尽きた。
この子はリオ君、疲れきった私を毎日癒してくれる偉大な存在。
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