万華鏡は月を巻き戻す
「一人暮らしなんだね。」

「うん。」

「ご両親は?」

「健在だよ。今海外にいるんだけど。」

「そうなの?」

「俺昔病気してたからさ。その時すごい過保護でさ。
今こうやって自由にできるのはかなり楽。」

「へぇー。今は平気なの?」

「うん、大丈夫。」

朔は軽く笑って答えるけれど、
その笑顔の奥に、ほんの少しだけ影が見えた気がした。

「私さ……朔のこと何にも知らないなって思って。」

「なに? 俺のこと知りたくなった?」

朔がニヤニヤしながら覗き込んでくる。

「……うん。」

そう言った瞬間、朔の表情がふっと真剣になる。

「そっか。」

少し考えるように視線を落としてから、
ゆっくりと話し始めた。

「好きな食べ物は、りんご飴とオムライス。
嫌いな食べ物は、ピーマン。」

「へぇー、なんか可愛い。」

思わず笑ってしまう。

「趣味は……なんだろう。身体を動かすこと。」

「健康的だね。バスケも上手いしね。」

「サッカーも自信あり。」

「すごい。」

「あと……料理も好きだな。」

「へぇー。」

「得意料理は……オムライス!
ふわっとろで美味しいから。」

「ほんとに?」

「ほんと。今度食べさせてあげる。」

「楽しみにしてる。」

朔は照れたように笑った。
その笑顔は、いつもの明るさとは少し違っていて──
どこか、胸の奥をくすぐるような優しさがあった。
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