万華鏡は月を巻き戻す
ピンポーン。
「あ、宅配かな。ちょっと待ってて。」
「うん。」
朔が立ち上がり、玄関へ向かう。
思ったより元気そうで、少し安心した。
……そのとき。
押し入れの隙間から、白い紙がはみ出しているのが目に入った。
(なにこれ……?)
何気なく手を伸ばし、引っ張り出した瞬間──
息が止まった。
透さんの名前。
私の名前。
勤務先、家族構成、住所、誕生日……細かすぎる情報。
胸がざわつく。
嫌な汗が背中を伝う。
気づけば、押し入れの奥へ手を伸ばしていた。
スッ──。
引き戸をあけると…
私の写真。
それだけじゃない。
家族、友達、学校の人間関係……
すべてが線でつながれ、
中心には──私。
(なにこれ……どういう……)
ひとつのメモに目が入る。
そこには、たった一行。
「殺された──?」
声にならない声が漏れた。
その瞬間。
「見られちゃったか。」
背後から、低い声。
振り向くと、
朔が静かに立っていた。
さっきまでの柔らかい笑顔はどこにもなく、
目だけが、深い闇のように揺れていた。