普通じゃ満たされない夜

第2話 知らない名前

次の日も、あの言葉が頭から離れなかった。

1限の講義中、先生の声を聞き流しながら、
私はノートの端に意味もなく線を引いていた。

前の席では、友達がこっそりスマホを見て笑っている。
いつも通りの大学。
いつも通りの一日。

なのに、私の中だけ何かがずれていた。

休み時間、タクヤからLINEが来る。

「今日サークル終わり迎え行こうか?」

すぐに返せばいいのに、
私は数秒、画面を見つめてしまった。

優しい。
本当に優しい。

それでも昨日のあのページを、また開いてしまう。

そこに短い文章が増えていた。

「満たされないのは、わがままだからじゃない」

息が止まりそうになる。

その下に、小さく表示された名前。

みつり

私はしばらくその名前を見つめて、
気づけば問い合わせフォームを開いていた。

「満たされないって、どういうことですか」

送信。

すぐに後悔したのに、
もう遅かった。

返ってきた言葉は短かった。

「たぶん君はもう、自分で分かってる」

その一文だけで、
私はスマホを伏せた。

怖い。

でも、それ以上に気になる。
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