普通じゃ満たされない夜

第6話 前の私には戻れない

みつりに会ってから、
日常の見え方が変わった。

タクヤといても、前みたいに安心だけではいられない。

「最近疲れてる?」

「ううん、大丈夫」

また嘘をつく。

本当はもう、
大丈夫じゃないのに。

私はまた、バーに向かった。

みつりは私を見て言う。

「今日は逃げなかったね」

「……別に」

「その顔の方がいい」

その夜。

彼は一瞬だけ、私の髪に触れた。

たったそれだけなのに。

心臓が、壊れそうなくらい鳴った。

私はもう知ってしまった。

“何も起きない優しさ”と
“何かが起きそうな距離”の違いを。
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