家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています
 混乱が頭に満ちる。

 表情も体も静止して、目を白黒させる明莉の前で、圭二は傍らにあった箱を、ぽんと叩いた。

 明莉がぼうっとそちらを見れば、それは段ボールだ。

 その中には圭二の私物がある……。

「引っ越すことにした。新しい彼女と籍、入れるから」

 理解が追い付かない明莉に対して、圭二はしれっと言った。

 今度は明莉がさらに、理解できない内容だった。

「……は?」

 さすがに変な声が出た。

 引っ越す?

 新しい彼女?

 籍……?

(え、なに言ってるの? 彼女は私だよね?)

 もう目を白黒させるどころではない。

 だが目を見開いて動揺するばかりになった明莉を見つめる圭二は、どう見てもふざけている様子ではない。

「あれ、まったく気付いてなかったの? もう半年くらい付き合ってたんだけど」

 それどころか頬には微笑が浮かぶ。

 笑みではあるが、どこか薄暗い表情だ。

 圭二のこんな表情を、明莉は今まで見たことがなかった。
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