恋愛はめんどくさい!
授業が終わり下校の時間になると、教室内は少しだけ慌ただしくなる。
私は鞄を肩にかけ、廊下に出た。
今日は部活動のない日なので、すぐに帰るつもりだった。
恵もすぐ近くにいた。
「ねえねえ京子、今日この後さ――」
恵が何か言いかけたとき、男性の声がした。
「あ、大沼さん」
知っている声だった。
振り向いた先に立っていたのは、星川先輩。
一瞬、呼吸が止まる。
先日のデート(らしきもの)の余韻がまだ残っているせいか、先輩の顔を見るだけで胸がざわつく。
「先輩……こんにちは」
なるべく自然に、いつも通り自然に……
と、思えば思うほど、ぎこちない態度になりそうで焦る。
隣にいる恵は――
目を見開いて、私と先輩を交互に見ていた。
「京子、この人って……」
「同じ部活の……先輩だよ」
私は落ち着いて説明をする。大丈夫、ちゃんと自然な返答ができて……いる……はず。
しかし恵は、何かを確信したようだった。
「あーなるほどー。いやあ、先輩ですかぁ。京子がいつもお世話になってまーす」
これ、絶対誤解してるだろ。
いや、誤解というか、まあ半分は正解かもしれないが……
先輩は明らかに戸惑っていた。
「え、あ、はい……」
恵の勢いに押されているのがわかる。
「いやー、先輩、背ぇ高いっすねー。しかも、なーんかいい雰囲気だし!」
「え、いや、その……そんな……」
先輩はしどろもどろ。恵の褒め言葉に、どう反応していいかわからない、といった状態だ。
恵と一緒にいるとよくあることだが、こんなときにどうしていいのか、私にもわからない。
すみません先輩、と心の中で謝っておいた。