皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
俺の実母と父は恋愛結婚だったらしいが、義母とは完全な政略結婚で、ふたりの関係は冷え切っている。

そもそも再婚する気のなかった父だが、外交上避けられなかった。

すでに俺という後継者がいたせいもある。

とはいえ、未来の俺も含め貴族社会の結婚などそんなものだろう。

ミクス殿下のように政略結婚相手と愛し合えたなら幸いだが、俺の体質ではきっと難しい。

将来に冷めた展望しか抱いていない俺に、ワクス前団長は自身の結婚について教えてくれた。

実家の反対を押し切り結婚したワクス前団長はメリハ族直系の生き残りの妻とひとり娘を溺愛しており、皇都を離れたのも妻子を守るためだったらしい。

そして前団長と妻は運命の伴侶で、魔力過多も妻と結ばれて治ったという。

あっさり説明されたが、これは重大な国家機密レベルの話だ。

前団長はこの件について国に報告していないという。

騎士団の縁遠いただの後輩の俺になぜ教えてくれたのか尋ねたところ、いつかわかると豪快に笑っていた。

これまでの恩もあり、彼の秘密は申し訳ないがミクス殿下にも伝えず、守り抜こうと思った。

その決意は通信魔具で彼のひとり娘と言葉を交わす機会が増えるたび、強くなった。

彼女との挨拶や他愛ない会話をいつからか心待ちにしている自分がいた。

彼女について知るたびになぜか胸がざわめき、揺らぎ、苦しくもなる。

そして声を聞きたい、できれば会いたいと日に日に強く願うようになっていた。


こんなに制御できない感情は初めてだった。
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