皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
詳細な説明や話はこの場を離れてから行うとミクス皇太子殿下とアレン様が宣言し、皆で一斉に引き上げる。

私は一度だけ魔湖を振り返り、感謝の気持ちを込めて礼をした。

すると隣に立っていたアレン様も魔湖に向かって頭を下げてくれていた。


「……キラナを助けてくれた湖だから」


尋ねる前に告げた彼の温かな想いに胸が熱くなった。

完全に闇が訪れる前になんとか森の迂回路を抜け切り、ひとまず安堵する。

今夜はここから離れたところにある街で休むのかと予想していたが、アレン様たちが向かったのはなんと私が以前暮らしていた辺境伯領地だった。


「アレン様、この辺りは今、誰も暮らしていないはずですし、魔獣の危険があるのでは」


「ああ、そのために騎士団の人員を増やし、結界を強化したのでこの屋敷付近は安全だ」


「え?」


アレン様が足を止めたのは懐かしい実家だった。

父の葬儀を終え、逃げるように皇都で暮らすようになってからは一度も戻らなかった。

父が眠る場所は辺境伯邸から離れた場所にある、ふたりのお気に入りだった丘の上だ。

母も今はそこで父とともに永遠の眠りについている。

母の葬儀後、丘には足を運んだが屋敷には行かなかった。

人が住まなくなって寂しく荒れた場所を見たくなかったからだ。

穏やかで楽しかった思い出だけを覚えていたかった。
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