皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る
運命の伴侶には支え合うというより、きっと助けてもらうことのほうが多い。

体質や薬の件は話せない。

研究のためなど理由をつけて没収されたり、余計な疑いをもたれたりしてはいけない。

考えたくないが、弱みとも言える体質にかこつけて、ほかの同族者がなにかを無理強いされる可能性もある。

それだけは避けたい。

明らかに歓迎されていない屋敷に、メアリに来てもらうのは気が引ける。

そんな私に、聡いメアリはなにかを悟ったようにはっきり言い切った。


「私はお嬢様と参りますから。よく知りもしない場所におひとりにはできません。薬の管理などもお任せください」


温かな言葉が胸に刺さる。


「……苦労をかけてしまうけど、ごめんなさい」 


「なにをおっしゃいます。万全な荷造り、対策をして参りましょう」


頼もしい物言いと明るい笑顔にほんの少し心が軽くなった。

明日からはしっかりしようと言い聞かせ、その夜は弱い自分を抱きしめながら眠りについた。

それからさらに二十日ほどが過ぎ、公爵邸に移る日がやってきた。

迎えをよこすと言われていたが丁重にお断りした。

卑怯とは思ったが、できるだけ緊張する時間を短くしたかった。

伯爵邸よりもさらに広く荘厳な公爵邸の前に馬車が到着する。

変化の魔術は使っていないため、反射的に視界を覆うヴェールの端を握りしめたとき、メアリが小さく首を横に振り、直してくれた。

周囲には手入れの行き届いた庭があり、鮮やかな花々が美しく咲いている。
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