ラビット・ボンド
 トラオとのツーショット。何回見ても、画面の中の美月ちゃんは無邪気な顔で笑ってる。
 かわいすぎて、涙でる。

「リカちゃん?」

「うぅ……」
 
「あ、泣いた」

 情緒ジェットコースターが、アルコールをガソリンにして元気に滑走中だ。もうほとんど頭は回ってない。感情だけがぐるぐる回り続ける。

「どした?」

 優しい声色に、涙が止まらなくなる。
 この男のせいなのに。意味が分からない。

「み、美月ちゃんが、かわいいから」

 言葉をつまらせながら、私は話し出した。
 どうしてか、話したくなってしまった。トラオはやっぱり魔術師かもしれない。

「みづきちゃん?」

 うん、と頷いてスマホを渡す。

「ああ、ウサミミ。――と、これ俺じゃん」

 スマホ画面を確認して、トラオが呟いた。
 数秒の沈黙。状況を整理してるんだろう。それからトラオはスマホを私に返して、ゆっくりと話し出した。

「リカちゃんはミミのファン? で、俺との写真にショック受けて泣いてる」
 
 合ってる? と目を向けられる。
 
 でた。ミミ。直で聞くと破壊力がやばい。
 当然のごとく、知ってる子を呼ぶトーンだった。私が一生呼ぶことのできないトーンで、この男は“ミミ”と呼ぶ。
 その事実がどれほど私にダメージを与えるかなんて、きっとトラオは理解できない。
 
「……久しぶりだったからびっくりしただけだし!?」

 トラオの察しの通りだ。合ってる。ドンピシャ。大正解。
 でも、素直に頷けなかった。
 ごまかすように、その辺にあったつまみを食べる。運悪く香辛料の塊だったせいで、思いっきりむせた。慌ててビールを喉に流し込む。

 ようやく落ち着いたところでトラオに目をやると、あろうことか、ヘラヘラ笑っていた。

「はあ!?」

 超絶腹立つ。私がキレてる理由を知ってもその態度とはいただけない。
 まあ、どんな態度されたところでどうせムカつくんだけど。
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