ラビット・ボンド
 ぷは。吹き出す私に、トラオが拗ねたような顔をする。
 
「ごめんごめん、ウケちゃった。なにそれ経験則?」

「まあ、そんな感じ?」
 
 どんな感じ? と視線で問いかける。

「こう……連絡とか途切らせても怒られない人生だった」

 おお。橘虎雄っぽい。
 
「リカちゃんにはそう思われたくないから、先に言っておこうって」

「なるほどねぇ、超納得した」

 うんうん、と大げさに頷く。
 実際めちゃくちゃ分かる。連絡こなくなったところで、あー飽きたんだな、了解! で自己完結するだろう。

「ちゃんと分かった? 俺、全然飽きてないから」

「分かった分かった」

「帰ってきたらすぐ連絡するから、誰とも遊ばないで大人しく待ってて」

 笑いながら、トラオが言う。
 
 なんだそれは。私のことをなんだと思ってるんだ。
 いや、トラオとの出会いを振り返るとどう思われても文句は言えないか。
 
 私だって遊びたくて遊んでるわけではない。心が荒れて泥酔した私が暴走するだけなのだ。
 年齢も重ねてきたし、最近は荒れることも少なくなったし、そんな機会もそうない。
 いやまあ……この間やらかしたけどアレはトラオのせいだし。
 それに――。

「まあ、俺よりイケてる男なんかそう見つからないと思うけど」

 にやり。トラオが口角をあげる。

 それはそう。悔しいことに、その通りすぎる。
 見た目はもちろん、橘虎雄だし。あんな出会いだったから、酒癖の悪さはバレてるし。サシ飲みを重ねてるから、空気感もそこそこ出来上がってて楽だし。何故か口説かれてるから、気分は良いし。
 最近はこうしてトラオと飲んでることもあって、誰かと喋りながら飲みたい欲も十分満たされている。
 
 それに、来月は美月ちゃんの映画の公開が控えている。この間の試写会で観た作品がいよいよ公開されるってわけだ。
 舞台挨拶もあるし、普通に劇場にも観に行く。そう考えると、そこそこ忙しいかもしれない。

 美月ちゃんに何もなければ――荒れた心で夜の街を徘徊しなければ、一ヶ月くらい誰とも会わずに過ぎ去っていくだろうな、とぼんやり思った。
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