空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜

 涙を溜めた拓翔の真剣な瞳が、仄香の泣き顔をまっすぐ見つめていた。その約束の言葉は、痛みに沈みかけていた心に小さな灯をくれた。

 仄香も同じ花を摘み、指輪を作った。二人でそれを贈り合い、左手を掲げる。空には飛行機雲の走る澄んだ青が広がり、柔らかな光に包まれた景色のすべてが、その瞬間の記憶として焼き付いた。

 あれから何年も経っているのに、その光景は今も鮮明に浮かぶ。指輪の感触も、拓翔の笑顔の温もりも、あの日見上げた青空の高さまでも、ありありと思い出せる。

 それは誰にも奪われない、仄香にとってたったひとつの支え。どんな孤独や圧迫の中にあっても忘れることのない、彼との約束の記憶だった。

(だから――)

 夢を叶えた拓翔に再び会えることを信じて。少しでも彼の世界に近い場所で、自分も生きていたい。

 高卒の自分でも現実的に働ける場所として選んだのが、空港に一番近い旅行代理店だった。

 業務の合間に窓の外を見上げると、飛行機が空高く飛び立っていくのが見える。轟音を響かせながら遠ざかっていくその姿は、仄香にとって小さな希望だった。

 大空へ向かう飛行機は、拓翔が夢を追いかけている証のように思える。それ感じるだけで、重く沈んでいた心が少しだけ軽くなる。

 どんなに現実が冷たくても、この光景を目にするときだけは、わずかな幸せを感じられるのだった。

< 12 / 160 >

この作品をシェア

pagetop