空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
玄関のドアが閉まる音に続き、ヒールを脱ぎ捨てる軽やかな音が響いた。
「ただいまーっ」
疲れを微塵も見せず、里穂は笑顔を浮かべて部屋に足を踏み入れる。その声に反応するように、母が自室の扉を開けて姿を現した。
「おかえり、里穂」
「うん、ただいま」
里穂はそのままリビングの中央へ向かい、母も隣に並ぶように後ろを進む。
「てかさあ、お母さん、聞いてよ〜!今日もあのババアがウザいのなんのって!」
言いながらソファに腰を下ろし、隣に座った母にぐっと身を寄せる。母は頬に手を添え、「あら……」と眉を下げて頷いた。
「フライト中もいちいち私のやることに難癖つけてくるし。ムカつく客がいたからちょっと声のトーン変えただけで口出してくんの。重箱の隅つつくみたいで、ほんとやな感じ!」
仄香は味噌汁の蓋をそっとずらし、火を弱める。立ちのぼる湯気の向こうで、二人の会話が途切れなく耳に届いてくる。
「『乗客の命預かる責任を持て』とか『若さに甘えるな』とか、いちいち説教くさくてホント無理。適齢期過ぎても結婚できないからって、八つ当たりしないでほしいわ〜」
止まらない里穂の愚痴に、母は深く共感するように頷く。
「分かるわぁ。そういう女ほど自分が選ばれなかった現実を認めたくなくて、若くて綺麗な子を攻撃するのよね」
「それ!こっちのが圧倒的に需要あるって現実、ちゃんと見ろよって感じ」
母の言葉に乗るように、里穂は意地の悪い笑みを浮かべる。
「でもさ……実は私、その女が狙ってる男ととっくに寝てるんだよね。何回もデート行ってるし、それ知ったときのあの女の顔、想像するだけで笑えるわ」
「まあ……ふふ、それは余計にこじれるわねぇ」