空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
母の目が、まるで自分のことのように綻ぶ。
里穂は得意げに脚を組み直し、わざとらしく笑ってみせた。
「ほんと惨めだよね。いくら仕事ができても、狙った男一人もモノにできない女って哀れだわ〜」
小気味よさすら帯びた嘲笑が、リビングに響く。
「………」
台所で食事の支度をする仄香は、手を止めることなく、視線を落としたまま聞き流す。
姉の上司の悪口も、同僚への愚痴も、もう何度聞いたか分からない。内容の真偽はともかく、里穂が美人であることも、男に困らないことも、紛れもない事実だった。
「男なんてさ、仕事が完璧より、ちょっと抜けてるくらいの方がウケいいのにね。売れ残りはそこんとこ分かってないっていうかぁ」
「そうね。でも、それは里穂くらいのスペックがあってこそじゃない?」
「あはは!確かに〜!」
くすくすと笑い合う二人の声は、この家に漂う重たさだけを避けるように、軽やかに弾んで広がっていく。
そんな中、仄香は黙って味噌汁を器によそう。鼻先をかすめる味噌の香りだけが、この家で自分を現実に引き戻してくれるようだった。
白米を盛った茶碗を並べ、焼き魚と副菜も揃えてテーブルに運ぼうとした、その時──
「あ、そういえば。……ねえ、仄香」
何気なさを装った声で、里穂がふと思い出したように口を開く。
不意に名を呼ばれ、反射的に仄香の肩が震えた。