空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
穏やかに積み重なった時間は、仄香の心にも身体にも確かな変化をもたらしていた。
鏡に映る自分の表情から陰りは消え、ふくらみを戻した頬にはやわらかな血色が戻っている。それは、日々の中で確かに幸福を感じられている証だった。
日々の中で、ふと過去がよぎることはある。けれど以前のように、その記憶に引きずられて動けなくなることは、もうなかった。
そんな日常の中で時折、拓翔が手配した弁護士を通じて、かつての家族の近況が伝えられてくることがあった。
姉である里穂の末路は、まさに「自業自得」としか言いようがなかった。
あの日、店舗の前で醜態を晒した動画は、瞬く間にネットの波に乗って拡散された。
一度刻まれたデジタルタトゥーは、決して消えることはない。炎上そのものは時の流れとともに収まったものの、里穂は社会的な立場も信頼もすべて失い、今どこで何をしているのかも分からない。少なくとも、かつてのような場所に戻ることはないだろう。
一方で母は東京を離れ、地元へと戻ったという。
そこでの暮らしは決して楽なものではなく、これまでの振る舞いに加え、里穂の件や仄香に対して重ねてきた度を越えた言動までもがどこからともなく広まっているらしい。
周囲の視線を浴びながら、肩身の狭い思いで日々を送っているという。