空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
そして今、あの二人が仄香へ接触することは、法的にも事実上不可能となっている。
二人の顔を思い出しながら、仄香は最後の一口となった紅茶をゆっくりと喉へ流し込んだ。
彼女たちへの怒りや恐怖は、もう残っていない。今はただ、ようやく手に入れたこの幸せが、少しでも長く続いてほしいと願うばかりだった。
『昨日は局地的な大雨の影響で各地の交通機関に乱れが出ていましたが、本日はおおむね平常通りの運行となっており──』
(……さて、そろそろ準備しないと)
ひとときの休憩を終えた仄香は、ソファからのんびりと立ち上がる。
テレビの電源を落とし、台所へ向かう。流しに置いたティーカップを丁寧に洗っていると、縁同士が触れ合い、かちりと小さな音が鳴った。
その拍子に、ふと視線が落ちる。
左手の薬指に宿るダイヤモンドが窓から差し込む光を受けて、静かな存在感で輝いていた。
仄香はそっと指先でそれをなぞり、やわらかく微笑む。
水を止めて優しく拭き上げたティーカップをカップボードへ戻し、すっかり慣れ親しんだ室内を見渡す。
旅行代理店を退職したあと、この新居へと移り住むのと同時に、拓翔と籍を入れた。
今は「加賀美仄香」として、夫の拓翔を支える毎日だ。