空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
今度は、リビングの奥から嘲る声が飛んできた。
視線を向けると、ソファに座った母が朝の情報番組を眺めながらコーヒーを口にしている。母は仄香をかばうどころか、むしろ呆れたように里穂に同調した。
「まったく……本当に使えない。そういうところも、あの人にそっくりなのね」
突き放すような言葉は、姉の怒鳴り声よりもずっと深く心に刺さる。
「……ごめんなさい……」
何度目か分からない謝罪の言葉を、また口にする。
朝食の支度も、洗濯も、掃除も、最近はすべて仄香が担っている。自分も仕事へ行かなければならないのに、少しでも間に合うよう、誰よりも早く起きている。
それでも、感謝の言葉はない。むしろこの家ではそれが当たり前だった。
生活費だって、仄香の給料からほとんど引かれている。家に入れているというより、母に管理されていると言った方が正しい。
通帳もカードも母の手元にあり、仄香の手元に残るのは母の機嫌の良い時に気まぐれに与えられる、わずかな小遣いだけだった。
けれど、それについて口を挟める立場ではないことも、仄香はよく分かっている。
「はあ〜。仕方ないから今日は別の服で行くしかないかぁ。せっかくのデートだから気合い入れたかったのにぃ」
「あら。じゃあ今日は遅いの?」
里穂の何気ない言葉に母はカップを置き、身を乗り出すように食いついた。
「そう。フライト終わりに行ってくる。今日は国際線の有望株よ」
「国際線?ってことは、前に誘われた男はお気に召さなかったの?」
「あー、あれ?条件はそこそこ良かったけど、なんか重いからパス」
里穂は肩をすくめ、さらりと言い放つ。
「まだ一人に決めるつもりとかないし。それに彼氏として選ぶなら、ちゃんと吟味しないとね」