空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
そう言いながら、里穂は長い髪を指先でかき上げた。その仕草は、自分の容姿に対する絶対的な自信で溢れている。
客室乗務員として働く里穂は、身内の贔屓目を差し引いたとしても周囲から群を抜いて目立つ美貌の持ち主だった。昔から異性の注目を集めるのが当たり前で、食事やデートの誘いが絶えず、里穂自身もそれが当然だとばかりに受け止めている。
そして、そんな美人で要領のいい姉を、母は昔から溺愛していた。
「そうね。里穂ほどの女性が妥協する必要なんてないわ」
母は満足そうに頷きながら、娘の言葉に同調する。
「私みたいに失敗しないように、結婚相手は慎重に選びなさい。せっかくCAになったんだもの。稼ぎも肩書きも申し分ない男を捕まえなきゃ」
その言葉に、里穂はくすっと笑った。
「任せてよ、お母さん」
そう言って、軽く肩をすくめながら続ける。
「心配しなくてもどうせ向こうから寄ってくるわ。その中から一番いいの選べばいいでしょ」
まるで当然のことのように言い放った。二人の軽やかな声は、この場に仄香が存在していないかのように楽しげに響いている。
(もうずっと、こんな感じ……)
父が生きていた頃は、ここまで露骨ではなかった。
何をさせても器用にこなす母親似の美人な姉。反対に、何をさせても鈍臭く、気の弱い妹。
仄香を小馬鹿にする空気はあっても、父の声ひとつで静かに軌道修正されていた。父の存在があるだけで、この家の均衡はまだ保たれていた。